2008年2月18日月曜日

逆流性食道炎


アルコールや冷たい水を飲むと、食道が沁みるように痛むので、友人の消化器内科医に相談したところ、「逆流性食道炎だと思うが、一度、内視鏡検査をしたらいい」と言われて、早速、検査を受けた。

内視鏡スコープの管が太いと喉を通過する時に苦しいため、現在では直径わずか5.9mmという、従来の内視鏡スコープのおよそ半分の「経鼻内視鏡」がある。しかし私は、管は太いが画質が最も良いハイビジョン内視鏡で診てもらうことにした。

事前に聞かされていた咽頭反射はほとんどなく、喉を通過する時に少し苦しいだけだった。まさに「喉元過ぎれば、なんとやら」、といった感じだ。
一方、期待していた映像は、非常に奇麗。熟練した内視鏡医なら1mmの超早期胃癌でも見つけることが可能だという。

食道から胃へ、そして十二指腸へとスコープの先端が移動する。自分の腹の中を眺めるのは、実に不思議な気持ちだ。

結果、予想通り逆流性食道炎で、胃酸によってできた潰瘍が食道にくっきりと浮かんだ。胃には軽い糜爛がみられたが、癌やポリープはなかった。

この内視鏡検査を行ってくれた友人は、横浜にある650床の病院の消化器部長で、4名のスタッフで年間6500件の上部消化管検査、1800件の下部消化管検査をこなし、外来患者と病棟に入院している患者を診ている。

しかし、昨年の秋に中堅のスタッフ2名が、待遇のよい私立病院に移ったため、残ったスタッフで内視鏡検査を行い、外来患者と入院患者を診ていては、いづれ医療事故が起きると判断し、経営側と交渉したを繰り返してきたが、現場の意見が受け入れられなかったため、この春に病院を辞めて開業することになった。

検査の後、一緒に食事をしていた彼が一言「もう、疲れたよ」と言った。その言葉には、諦めと悔しさがにじんでいた。

彼は、内視鏡で早期癌を切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)のパイオニアの1人でもある。しかし開業するとESDはもはやできない。今後、彼の経験と技術は、若い医者に伝わることはない。

医療崩壊。それは、病院が少なくなるだけではなく、経験豊かな熟練した医師が病院を離れることで、最先端の医療技術そのものが消滅する危機でもある。

経験豊かで高い技術をもった医者ほど忙しい。使命感に燃えている時はいいが、いずれ疲れて燃え尽きる。45歳以上のベテラン医師が病院を離れるのは、その苛酷な労働条件のためである。

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