2008年5月29日木曜日

携帯電話とペースメーカー



前のブログに携帯電話を利用した無線LANのことを書いたところ、「ペースメーカーを入れているのに、大丈夫なのか?」というコメントをいただいた。確かに、携帯電話はペースメーカーの動作に影響があると言われ、電車などの優先席では携帯電話をOFFにするように、とアナウンスがある。

実際、ガイドライン(日本医用機器工業会 ペースメーカ協議会)では、『携帯電話端末をペースメーカーから22cm以上離すこと。ペースメーカー植え込み部位と反対側の耳で通話すること』となっている。

しかし、少なくても私のペースメーカー(Medtronic製のENPULSE E2DR01:2006年7月に手術)の植え込み部位に携帯(AUのCDMA 1X WIN)を密着させて発信させても、全く支障はない。携帯電話だけでなく、無線LAN、電子レンジ、IHクッキング器、国内の飛行場の金属探知器や盗難防止探知器などで、今までに問題が生じたことは、一度もない。そこで、ペースメーカーを入れる前とほとんど同じ生活スタイルを行っている。もちろん、ある程度以上の電磁干渉を受ける可能性が高い機器の近くに長時間滞在することは避けている。

しかし、これらはあくまで私の個人的体験で、根拠はない。そこで、ペースメーカーに対するさまざまな電波の影響を調べたところ、総務省の【電波利用ホームページ】に詳しい検討報告がのっていた。

その報告によると、
①800メガヘルツ帯W-CDMA方式の携帯電話端末から発射される電波については、「植込み型心臓ペースメーカのペーシング機能に影響を生じる場合があることが確認された。この影響は、携帯電話端末を遠ざければ正常に復する可逆的なもので、最も遠く離れた位置でこの影響が確認されたときの距離(最大干渉距離)は3cmでした」と記している⇒参照
また、1.7ギガヘルツ帯W-CDMA方式の携帯電話端末の影響については、「最大1cm未満の距離で影響を生じる場合があることが確認されました」と記している⇒参照

②無線LANについては、「影響を受けた植込み型医用機器は1機種であったことから、厚生労働省の協力を得て、医療機関を通じ同機種の利用者全員に対して、試験結果に基づく注意喚起を行った。よって、現時点で特段の注意をされていない植込み型医用機器の装着者は、無線LAN機器に対しては特別の注意は必要としない」と記している⇒参照

③Bluetoothについての検討報告は見当たらず、携帯電話と同じように「心臓ペースメーカーの装着部位から22cm以上はなして使用してください」といわれているが、無線LANと同じ2.4ギガヘルツ帯を使っているので、ほとんど問題はないと思われる。

以上のように、少なくても3㎝離れていれば携帯電話の影響はほとんどなく、無線LANも1機種のペースメーカー(メーカー名&機種は不明)を除いて使用可能といえる。一方、「据置きタイプ電子タグシステム(高出力型950メガヘルツ帯パッシブタグシステム)からの電波で、最大「75cmセンチメートル」の離隔距離でペースメーカに影響が生じることが判明した」という報告があるので、この点には注意が必要だ⇒参照

ブログへのコメントをきっかけに、さまざまな電波がペースメーカーに与える影響を調べたところ、きちんとした検証が行われていることが分った。しかし一方で、こうした情報が正確に伝わっていないのは、大きな問題だと思われた。3㎝離れていれば全く問題がないことが明らかになっている携帯電話について、22㎝以上離す必要があるというガイドラインの記述は、ペースメーカー使用者とその周囲の人たちに不必要な不安を与えると共に不便を強いるものである。

2008年5月18日日曜日

歩く無線LAN


   ▲S11HTとiPod touch


今まで、さまざまな電子手帳を使ってみたが、結局、手書きの手帳に戻っていた。しかし、iPod touchを購入してから、手帳を開くことがなくなった。もちろん、音楽データも入れていいるが、電子メールと予定の確認、ちょっとしたメモは、iPod touch1台で十分である。

インターフェイスの使いやすさはもちろんのこと、メールに添付されたワードやエクセル、PDFファイルも読むことができる。これでPPTファイルが読めれば、文句は全くない。

予定は基本的にGoogleカレンダーに書き込みんでアシスタントと共有しているが、最近、このカレンダーとOutlookのカレンダーを同期するソフトをGoogleが配布し始めたので非常に便利になった。まず、Googleカレンダーに書き込み、Outlookに同期し、そのデータをiPod touchに同期すればよい(私はiPod touchをWinで使っている)。

しかし難点があった。それは、iPod touchを使うには無線LANが必要なことである。そのため、外出先では公衆無線LANが使える喫茶店などを利用していた。しかし、イー・モバイルのEMONSTER(S11HT)を購入して状況は一変した。

このS11HTは、国内のスマートフォンで唯一、「インターネット共有」機能を標準搭載しているため、無線LANとしても使うことができるのだ。データ通信速度は下りが2.5Mbpsなので、iPod touchでインターネットを見たり、添付ファイルを下しても全くストレスを感じない。この機能は、Bluetoothでも使えるが、通信速度が落ちるので、私はWMWifiRouterというオランダのモロースメディア社が配布しているソフトを使っている。

このソフトを起動させると、どこでもiPod touchが使えるのである。イー・モバイルの通信可能エリアは、まだ大都市に限られているが、出張を含めて、十分に満足できるインターネット環境が作れる。

もちろんノートパソコンもどこでも使うこともできる。まさに歩く無線LANである。

私の心臓の話 その5



心臓ペースメーカーを入れて以来、心臓が遅くなる「徐脈」は解決したが、心臓が早くなる「頻脈」は解決していない。しかし、ペースメーカーを入れてから、頻脈は自然に治っていた。短い時は数分、長くても36時間以内には自然に治っていた。

ところが、今週の月曜日に始まった頻脈は、なかなか止まらなかった。心臓は1分間に160~180回拍動し、薬を飲んでも120回より少なくなることはなかった。

そのうち、家庭の血圧計では血圧が測れなくなった。いつもの頻脈と違って、かなり疲労感もあり、起き上がるとボッーとして仕事にならない。その上、手首で脈拍が感じないほど動悸が弱いので、心不全を心配して、水曜日に病院に行った。

心電図から、1:1の心房粗動(心房頻脈)で、脈拍は180回。血圧は上が(収縮期)80mmHgで、下は(拡張期)は測定不能であった。自然に止まりそうもないので、さっそく治療で止めることにした。

ペースメーカーを入れる前は、数日間入院して、脳卒中の原因となる血栓の有無を確認し、麻酔をかけて心臓に電気ショックを与え、一旦心臓を止めて拍動をリセットする治療を受けていた。

しかし、ペースメーカーを入れているので、ペースメーカーにコンピューターから指令を送り、脈拍数を徐々に上げることで頻脈をリセットできる。

コンピュータからペースメーカーに指令を送るのは、テレメトリーとよばれる小さな装置を、植え込んだペースメーカーのうえに置くだけだ。通常、ペースメーカーの電気刺激は、1分間に60~70に設定してあるが、その電気刺激の回数を上げていく。

普通なら、250回前後に上げるとリセットできるらしいが、私の頻脈は頑固で300回を越してもリセットできず、350回ぐらいでやっと心房細動に移行した。

心房細動は心房粗動(心房頻脈)と異なり薬で止めやすい。そこで、次に抗不整脈薬(サンリズム)の点滴を受けることになった。つまり、ペースメーカーからの刺激で粗動を細動にかえて、さらに薬で細動を止めるという二段階治療である。

点滴の準備をしている間、心電図を見ていた医者が「あ、洞調律になった」と言う。確かに、それまで不規則に暴れていた心臓が突然静かになった。

こうして、頻脈は治まり、仕事場に戻った。