2007年8月14日火曜日

番外編■医療関連News






■ムコ多糖症VI型治療薬の国内承認申請が行われる。
アンジェス(株)は、8月10日、ムコ多糖症VI型治療薬「Naglazyme」(一般名:galsulfase)の国内での承認申請を行った。
欧米で有効だと証明されているのに日本では未承認の薬は沢山ある。このムコ多糖症の治療薬もそうだ。ムコ多糖症は難病で日本には約300人の患者がいるといわれる。湘南乃風の若旦那がキャンペーンを張って知られるようになった疾患。厚労省の速やかな対応が求められる。
     ▼湘南乃風の若旦那とムコ多糖症



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■スピリチュアル・ブーム

2007年8月11日土曜日

参院選の結果に思う



東京新聞の「筆洗」(8月5日)に興味深いデータが載っていた。
先の参院選挙で当選した人の55.7%は憲法九条を変えることに反対している、というデータである。

そもそも、参院選の争点の一つは憲法を変えるか否かにあった。しかし選挙間際になって、年金や政治とカネの問題、閣僚の不始末が争点として急浮上してきた。結果は、自民党の惨敗、民主党の一人勝ちだった。しかし、投票の時に、憲法問題を意識して投票した人は非常に少なかったのではないだろうか。なぜなら、憲法を変えることにはっきりと反対している、護憲を主張する党が議席を減らしているからである。
一方、「憲法九条は守りたい」と考えていても「革新政党には票を投じたくない」と考えた人も多かっただろう。しかし、もはやそんな甘い考えでは、何事も変わらないのである

憲法問題については、さまざまな人が、さまざまな意見を述べているが、その中で卓越した発言をしているのが作家の高村薫である。高村は「憲法は国民が主権者であることを保証していると同時に、ときどきの政権が自らの政策の正当性の根拠とするものである。そのため、首相や閣僚は憲法の遵守を義務づけられているのだが、その彼らが率先して憲法改正を叫ぶのは、明らかにおかしい。ましてや政治課題にしたり、選挙の争点ににしたりする性格のものではないのは、言うまでもない」、「政権与党として尊重すべきは、国民が六十年も憲法を享受してきたという事実のほうだろう」と指摘し、「憲法は私たちとともにあり、時代や社会とともにあるのだから、私たちが欲すれば、変えることはできる。しかし私たちは、いま憲法を変える理由があるか」と問う。そして「安部政権は、美しい国を連呼するだけで、国民のために憲法改正を急ぐべきことの合理的な説明をしていない。そういう政権に、そもそも憲法をいじる資格はないと、私自身シンプルに考えている」と述べている(高村薫;社会時評,東京新聞,5月15日,2007)。
まさに高村が指摘するように、私たち一人一人が「今、憲法を変える理由があるか?」よく考えることが大切なのである。

参院選の結果をみて、もう一つ感じたことは「まだ日本人は本気で怒っていない。もしかしたら、怒りを忘れてしまったのかもしれない」ということだった。
今、私たちが考えるべきことは憲法問題だけではない。社会の格差は確実にひろがっている。日本は年間3万人以上の人が自らの命を絶つ社会である。生活保護を一方的に打ち切られて餓死する50代もいる。公園にはホームレスがあふれ、ホームレスの年齢は年々低年齢化している。そして、何事も「自己責任」の一言で切り捨てられる。人々は生贄を求めるようにヒステリックにバッシングを繰り返す。

憲法改正の先にあるものは、日本が集団的自衛権を行使できる国になることである。そして、格差社会が完成すれば富のほとんどは一握りの人々に集中する。再び、資本が一か所に集中するのである。その時何が起こるか、それは過去の歴史が教えてくれる。

いま求められているのは、過去の歴史に対する確かな知識と将来に対する想像力である。

大山鳴動して「爪切り」一つ




私は「身体障害者手帳」を持っている。身体障害程度等級は1級。つまり、最も障害レベルが高いと認められているのだ。障害名は、頻脈・徐脈症候群による心臓機能障害。昨年の夏にペースメーカーを入れた時から身体障害者なのである。

ペースメーカーを入れる前は、日常生活が何かと制約されて、不便になると思っていたが、実際に入れてみると、不自由さはほとんど感じない。私の場合、電子レンジや携帯電話の影響を受けたことがないので、普通に使っている。ただ、IHクッキングの器機に近づいたとき、なにやら心臓の動きに異常を感じたので、それ以来IHクッキングには近づかないようにしている。オール電化生活はできないかもしれない。

ペースメーカーを入れたことで、最も不愉快なのは、飛行機で移動するときである。地方都市での取材が多い私は頻繁に飛行機を利用する。「身体障害者手帳」を持っていると、飛行機や電車の運賃が割引になるので、その点は良いのだが、不愉快なのは空港の出発ゲートで行われるハイジャック防止の検査時である。

金属探知機のゲートをくぐると、ペースメーカーが影響を受けるといわれているので、ゲートの横を通って、係員のボディチェックを受けるのだが、それが極めて屈辱的なのである。ゲートが反応してボディチェックを受ける人よりかなり厳しく検査される。時間もかなりかかる。また、ゲートを普通に通過していく人の視線も気になる。

私は男だからまだいいが、女性の場合はかなり嫌な体験だと思う。せめて、別室やカーテンで仕切られたスペースで検査を受けられるようにならないものだろうか、といつも思う。高齢化社会の進展とともに、ペースメーカーを必要とする人は急激に増えている。そしてその多くが、元気に生活している。つまり、飛行機に乗る多くの高齢者が金属探知機のゲートをくぐれないということを、警備会社は配慮すべきではないだろうか。そして、ボディチエックは、受ける人にとってかなり屈辱的であることを係員は認識して、それなりに対応すべきだと思う。少なくても、凶器を隠し持っている可能性がある、それを探すのだ、という態度だけは慎んでもらいたい。

先日、佐賀空港では手荷物検査でも嫌な思いをした。仕事がら私のカバンには、コンピュータ、IC録音機数台、カメラなど、取材機器が詰まっている。普通はコンピュータを別に検査してもらえば問題なく1回で通過できるのだが、その時は違った。佐賀空港の女性のセキュリティー検査官は、カバンの中の物を一つ一つ開けて検査を始め、何回もレントゲンを通して調べるのである。

対応は慇懃無礼で、あまりにシツコイので、短気な私は「みんな開けて調べていいから、終わったら持ってきてくれ」といって待合室の席で待っていた。しばらくすると女性の係官が来て「ライターが二つあるので一つは破棄してください、それと、これは機内で出さないでください」といって、小さな光る金属を手に載せていた。なんとそれは「爪切り」だったのである。冒頭の写真の「爪切り」だが、一緒に入れていたハサミの方がまだハイジャックには役立ちそうである。

時間をかけて、何回も調べて、やっと係員が見つけたのは小さな「爪切り」だったのである。爪切りでハイジャックができるとは思わないが、それより驚いたのは係員の「機内では出さないでください」という言葉だった。そこに、どのような意味があるのだろうか。機内で出すと危険だと思うなら、機内に持ち込ませなければいい。機内への持ち込みを許可するなら、危険物と認識していないことになり、なぜ「機内で出さないでください」ということになるのか。時間をかけて何を探したかったのか。そもそも、何のためのセキュリティチェックなのか。
もう二度と佐賀空港は利用しない。

最近読んで面白かった本



最近読んだ本から、お勧め本。

『悪人』 吉田修一著 朝日新聞刊
最近読んだ本の中では、特に面白かった1冊。新聞連載小説だが、単行本にするにあたり、かなり手を入れているという。限られた文字数で、毎日毎日書く。多分、著者は1日に1回分の原稿を書いていたのではないだろうか。そう思えるほど、視点がくるくる変わる。一つの事件をさまざまな人の視点で捉え、それが猛スピードで展開する。最後は少し疲れが感じられるが、それでも一気に読者をゴールに連れ込む。読み終わってもなお、読者の想像力は止まらない。久しぶりに面白い小説だった。

『押入れのちよ』荻原浩著 新潮社刊
九つの短編集。表題の「押入れのちよ」より「お母さまのロシアのスープ」がいい。寝る前に1編ずつ読んで、物語について考えていると、眠くなる。かなり上質な睡眠を約束してくれる小説。

『レストア』太田忠司著 光文社刊
主人公は心を病んだオルゴール修復師。謎解きより、主人公の心が癒されていくプロセスがいい。主人公の周囲の女性たちが、みんな魅力的である。『細雪』に登場する姉妹の三女を彷彿とさせる

『医療の限界』小松秀樹著 新潮社新書
著者は虎の門病院泌尿器科部長。2002年の12月におこった、慈恵医大青戸病院における前立腺がんに対する腹腔鏡手術で患者が死亡した事件についての著作『慈恵医大青戸病院事件』(日本経済評論社)や『医療崩壊-立ち去り型サボタージュ』(朝日新聞刊)がある。
岡井崇著の小説『ノーフォルト』(早川書房刊)と一緒に読むと、今、医療現場で何が起こっているのか、医療の限界とは何か、がよく分かる。今、患者と医師の関係を再構築する必要があるが、そのためには患者が「医学の限界」、「治療の限界」を知ることも非常に大切である。

『タバコ有害論に意義あり!』名取春彦・上杉正幸著 洋泉社新書;著者の名取氏は癌研究会附属病院に勤務したことのある医師。第2章「タバコを吸うとガンになるという常識は意図的につくられた」は、面白い。スモーカーの肺は真っ黒と信じている人もいると思うが、それも嘘だという。

『悪人』と違う意味で非常に面白かったもう一冊は、原宏一著の『床下仙人』(祥伝社刊)。特に、仕事一筋、仕事依存症の中年サラリーマンにお勧めの一冊。人生の価値観を考え直すきっかけになること請け合い。

その他、これも面白かった。
『細菌感染-作られたカルテ-』霧村悠康著 新風舎文庫
『看守眼』横山秀夫著 実業之日本社刊
『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?』西村博之著 扶桑社新書
『となりのクレーマー』関根眞一著 中公新書
『1冊まるごと佐藤可士和』 Pen編集部編 阪急コミュニケーションズ
『小沢昭一座談』①、② 晶文社刊;40年前の「内外タイムズ」に掲載された対談をまとめたもの。ちくま文庫の『小沢大写真館』も面白い。