2009年3月14日土曜日

ミステリー 2冊


 今週はミステリーを2冊読んだ。湊かなえ著『告白』(双葉社刊)と柚月裕子著『臨床真理』(宝島社刊)である。前者は第29回小説推理新人賞を受賞した『聖職者』を第1章として、書き下ろしなどを加えた長編で「週刊文春ミステリーベストテン」の第1位にランクインしている。後者は、第7回「このミステリーがすごい!」大賞の受賞作だ。

 『告白』を読み始めた時、そのモノローグ的文体に違和感があったが、第一章の「聖職者」はテンポと展開が見事で、実に面白かった。しかし、第二章以降にはミステリーとしての面白さはあまりなく、特に最終章の「伝道者」は無い方が良いと思われた。この文体では、著者の構成力と文章力が分からないので、第2作目の長編『少女』(早川書房刊)も読んでみたいと思っている。

 『臨床真理』は、テーマに興味があったので購入。書き出しのテンポは良く、序盤はスリリングなので一気に読めるが、途中で事件の真相が分かってしまう。そして、その予想通りに後半は展開していく。良い意味で、読者を裏切る「驚き」は無い。さらに、登場人物の言動にリアリティが欠けており、「ああいう行動をする人が、こんなことは言わない!」と感じる個所がある。展開が強引な個所もある。しかし、著者の眼差しには共感できる。眼差しに筆が追いつけば、良い作家になれる。そんな気がする。

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