2007年8月11日土曜日

最近読んで面白かった本



最近読んだ本から、お勧め本。

『悪人』 吉田修一著 朝日新聞刊
最近読んだ本の中では、特に面白かった1冊。新聞連載小説だが、単行本にするにあたり、かなり手を入れているという。限られた文字数で、毎日毎日書く。多分、著者は1日に1回分の原稿を書いていたのではないだろうか。そう思えるほど、視点がくるくる変わる。一つの事件をさまざまな人の視点で捉え、それが猛スピードで展開する。最後は少し疲れが感じられるが、それでも一気に読者をゴールに連れ込む。読み終わってもなお、読者の想像力は止まらない。久しぶりに面白い小説だった。

『押入れのちよ』荻原浩著 新潮社刊
九つの短編集。表題の「押入れのちよ」より「お母さまのロシアのスープ」がいい。寝る前に1編ずつ読んで、物語について考えていると、眠くなる。かなり上質な睡眠を約束してくれる小説。

『レストア』太田忠司著 光文社刊
主人公は心を病んだオルゴール修復師。謎解きより、主人公の心が癒されていくプロセスがいい。主人公の周囲の女性たちが、みんな魅力的である。『細雪』に登場する姉妹の三女を彷彿とさせる

『医療の限界』小松秀樹著 新潮社新書
著者は虎の門病院泌尿器科部長。2002年の12月におこった、慈恵医大青戸病院における前立腺がんに対する腹腔鏡手術で患者が死亡した事件についての著作『慈恵医大青戸病院事件』(日本経済評論社)や『医療崩壊-立ち去り型サボタージュ』(朝日新聞刊)がある。
岡井崇著の小説『ノーフォルト』(早川書房刊)と一緒に読むと、今、医療現場で何が起こっているのか、医療の限界とは何か、がよく分かる。今、患者と医師の関係を再構築する必要があるが、そのためには患者が「医学の限界」、「治療の限界」を知ることも非常に大切である。

『タバコ有害論に意義あり!』名取春彦・上杉正幸著 洋泉社新書;著者の名取氏は癌研究会附属病院に勤務したことのある医師。第2章「タバコを吸うとガンになるという常識は意図的につくられた」は、面白い。スモーカーの肺は真っ黒と信じている人もいると思うが、それも嘘だという。

『悪人』と違う意味で非常に面白かったもう一冊は、原宏一著の『床下仙人』(祥伝社刊)。特に、仕事一筋、仕事依存症の中年サラリーマンにお勧めの一冊。人生の価値観を考え直すきっかけになること請け合い。

その他、これも面白かった。
『細菌感染-作られたカルテ-』霧村悠康著 新風舎文庫
『看守眼』横山秀夫著 実業之日本社刊
『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか?』西村博之著 扶桑社新書
『となりのクレーマー』関根眞一著 中公新書
『1冊まるごと佐藤可士和』 Pen編集部編 阪急コミュニケーションズ
『小沢昭一座談』①、② 晶文社刊;40年前の「内外タイムズ」に掲載された対談をまとめたもの。ちくま文庫の『小沢大写真館』も面白い。

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