2008年3月23日日曜日

デスクワークのアウトプットを如何に増やすか



     ▲札幌へ出張。老舗「だるま」のジンギスカン。

電車や飛行機に乗っている時は、読書に集中できるので、出張する時には、いつも文庫本と新書を1冊ずつ持っていく。その上、時間があると、駅や飛行場の本屋に立ち寄って、新たに文庫本や新書を買うこともある。

吉越浩一郎著『デッドライン仕事術』(祥伝社新書)も、羽田の第2ターミナルにある本屋で購入した1冊だ。

基本的に、HOW-To的ビジネス書は、ほとんど読まないが、この『デッドライン仕事術』は、「すべての仕事に締切日を入れよ」というサブタイトルが気になって購入した。

さっそく機内で読み始めたが、「はじめに」を読み進めるうちに、かなり内容がしっかりしているという印象をもった。実践的であり、指摘がかなりリアルである。たぶん、代表取締役としての著者のリーダー体験が裏付けになっているからであろう。

本書のテーマは「ホワイトカラーの生産性をいかに上げるか」ということだが、その方法論がかなり具体的で、日本のHOW-To的ビジネス書に多い精神論や人間関係論に、全く触れていない点も好感をもった。よく、「それは、あなただから、できたんでしょ!」と思える、全く客観性のない単なる思い込みや、「それができれば、悩みはしないよ!」、「こんな本を書いてないで、あんたが起業しなよ!」と、つい声を出したくなるような実現不可能なアイディアを展開しただけのHOW-To的ビジネス書が多い中にあって、本書は出色の1冊といえる。
そこで、その内容の1部である「仕事のアウトプットを増やす」方法論を紹介する。

一般的に、デスクワークのアウトプットを規定する要因は、【能力】、【時間】、【効率】であり、このうち、【能力と時間】が特に重視され、【効率】は能力の1つとも考えられていることが多い。

能力の高い人は短時間に効率よく仕事をこなすが、能力の低い人は、その分、長時間労働が求められる。

私の会社の職種を例にとると、一定以上の能力があるライター、編集者、デザイナー達が業務時間(8時間)内にこなせる仕事でも、新人はその数倍の時間を要し、それでも、使い物にならない(商品にならない)場合も多い。

この場合は、【能力】の差である。一方、【能力】が同じ場合には、【労働時間】を増やせば、仕事のアウトプットは増える。その意味で、能力が一定以上のスタッフを長時間働かせれば、それだけ大量の仕事をこなせることになる。現在、能力主義+年俸契約で働く多くの会社員が、このパラダイムの中に迷い込んでいる。

しかし、労働時間は限られている。寝る時間以外は全て労働時間としても、限界があり、そんな生活は生活とはいえない。「労働のための人生ではなく、人生を楽しむための労働である」。その意味で、私は「仕事に生きがいを感じる」という人間には疑問をもっているのだが、その点は、改めて論じることにする。

さて、【能力】と【時間】が一定の場合、いかに仕事のアウトプットを増やすか。これが本書の1つのテーマである。 著者は、【能力と時間】が一定でも【効率】を高めることで、アウトプットを増やすことができる、と指摘する。そして、【時間】を固定すると【効率】は必然的に上がる、と断言する。

【時間を固定する】とは、1つ1つの仕事に、明確でシビアーな【締切】を設定することである。 考えてみると、スタッフに仕事を任せる時、「できるだけ早く」とか「来週の初め頃までに」、といって頼むことが多い。これではダメだという。スタッフが「3日かかる」といった場合、その根拠を具体的に聞いて、論理的な【締切日】を提示することがリーダーの役割だという。

たぶん、その締切日はスタッフにとっては厳しいものであろう。厳しいからこそ、スタッフは仕事の効率を考えるようになり、その結果、能力も向上する。

しかし一方で、時間に追われると、手抜きやミスが増えてクオリティが落ちるのではないか、と心配になる。「だが、やってみればそんなことはない」と著者は言う。そしてこう指摘する。「目の前の作業に集中して取り組むようになるから、かえってミスは減る。そもそも、仕事のクオリティというのは本人の【能力】によって決まるものであって、【効率】に左右されるものではない」と。

2 件のコメント:

jingil さんのコメント...

個人的には、時間をかけないときちんとしない仕事と、投下時間で計れない種類の仕事があるように思います。そのような条件下で、効率化を考える場合、複数の仕事を同時進行し、コンピュータのように作業を細かくスレッド化して、フットワーク良く切り替えます。もちろん締め切り時間がタイムテーブルの基本です。

中には性格的に一つのことに没頭したい人がいます。単線に複数の仕事を並べることは時間的に不利です。より時間にシビアになるしかありません。私はこのやり方は怖くてできませんが、こういうタイプの存在も否定はしたくないです。

自分で自分の仕事を効率化していくことはどんな人にも求められます。それも才能の一部ですよね。

ジンギスカンがおいしそうです。

MARCH さんのコメント...

スタッフの性格、特にいくつもの仕事を同時並行でこなせる人と、1つしかこなせない人では、効率の中身が違いますよね。特に編集は雑務の集積なので、その点も難しい。