2008年4月11日金曜日

私の心臓の話 その4



ペースメーカ-は鎖骨の少し下に埋め込むので、まず、その部分に麻酔注射をうつ。そして麻酔が効くと電気メスで切開し、大胸筋の膜の下にペースメーカーを埋め込む。次に鎖骨下静脈という血管の中を伝って心臓の中まで導線を入れ、導線の先を心臓の内壁に固定する。その後、導線とペースメーカーを接続し、傷口を縫い合わせて終了する。
私の場合、導線は2本で、それぞれ右心房の内壁と左心房の内壁に固定されている。



普通は2時間ほどで終わる手術だ。手術前日に行われた医師の説明でも1~2時間程度で終わるといわれた。しかし稀に、鎖骨下動脈に導線が入らない場合があるが、その場合は他の血管を使う。また、稀に心臓の内壁がツルツルで導線の先を固定することが難しい場合もある、と医師は説明した。しかしいずれの場合も極稀である、とのことだった。

ところが、私の場合、この稀なことが重なった。まず、鎖骨下静脈がいくら掘っても出てこない。そこで、第2選択の血管に導線を入れた。すると次に、心臓の内壁に導線の先がなかなか固定できない。少し引っかかっても、咳をするとすぐに外れてしまうのだ。極稀なケースが2つ重なったことになる。そこで手術が終わるまで5時間を要することにとなる。

局所麻酔なので、この間、当然意識はある。医師との会話もできるし、医師の焦りと困惑も伝わってくる。手術室の焦りと緊張が極に達した時、医師がこう言った。
「少し休もう。でも、あきらめたわけではない。必ず、うまくいく」
その言葉通り、5分の休憩後、それまでの事態が嘘のように、電極の先端が心臓の内壁に固定された。いくら咳をしても、もはや外れることはなかった。

ペースメーカーが開発されたのは1950年代の後半で、最初のものは下の写真のように体外式で、非常に大きなものだった。それがわずか40数年で4×5cmの大きさになり、身体の中に埋め込んだまま5~7年間も動き続けるようになるのである。

               ▼最初の体外式ペースメーカー


◆参照:ペースメーカ-について

1 件のコメント:

jingil さんのコメント...

手術のお話はいつ聞いても、お尻がキュッとなります。
昔のペースメーカーの写真を初めて見ました。冷蔵庫何台分もの大きさがあったスーパーコンピューターが机の上に置けるようになったのと同じですね。原理はきっと変わっていないのでしょう。
早くナノテクが進歩して、人口透析器を体内に埋め込めるようになると良いと思いました。どれだけ多くの人の生活の質が上がることでしょう。