2008年3月24日月曜日

私の心臓の話 その3


   ▲私の心臓は、このペースメーカーで動いている:写真は模型


既に記したように、WPW & 心房細動によって急性心不全をおこし、それに続く多臓器不全から回復した後も、心臓の動きには悩まされた。当初は頻脈発作に悩んでいたが、そのうち徐脈の悩みが加わった。心臓の動きが早くなったり遅くなったりするのだ。

頻脈発作がが起こると、ほとんど自然に治ることは期待できない。そこで、1~2か月かけて仕事をセーブし、数ヶ月先の予定はキャンセルして、入院治療の準備をした。そのうち、徐脈が加わると、それまで頻脈の予防に使っていた薬も飲めなくなり、徐脈の回数は増えた。さらに徐脈によって夜中に突然苦しくて目が覚め、昼間でも脈拍の間隔が開くとボッーとして倒れそうになることもあった。また、運動に伴って脈拍数が増えないので、歩くと足の筋肉が酸欠で悲鳴を上げた。そんな時、前述したように、電気的除細動をかけた時に十数秒の心停止が起こった。

主治医は、すぐにでもペースメーカーの埋め込み手術を行うことを勧めた。しかし、私はすぐには納得できなかった。体内に異物を入れることにも抵抗感があったが、それ以上に、他の治療法で何とかならないものだろうかと思った。
そこで、文献を読んだり、セカンドオピニオンに相談したり、東洋的治療に頼ったりした。しかし、徐脈は徐々に悪化し、日常生活にも支障がでるようになった。

最終的に、ペースメーカーの埋め込み手術を決心したのは、一人に患者との出会いである。ちょうど、2年前の梅雨時、その年3回目になる電気的除細動のために入院していた時に、その患者と出会った。

6人部屋に入院していた私のもとに、毎日のように主治医と看護婦が、ペースメーカーの必要性を説きに来る。しかし、私は納得できるまで待ってくれ、いったん退院したい、と繰り返していた。そんな会話を聞いた同部屋に入院していた60歳ぐらいの男性が、ある日、私のベットサイドに来た。彼も同様の病気でペースメーカーを2年前に入れたという。そして、「まだまだ仕事が頑張れる歳だからこそ、ペースメーカーを入れた方がいい」と話し始めた。日常生活には何の不便もない、その上、身体障害者1級に認定されるから、さまざまな恩恵も受けらられる。なにしろ、QOL(生活の質)は格段に良くなる。私が保障する、と言う。彼も実際にペースメーカーを入れる時には悩んだ、とも語った。

彼との出会いが、彼の話が、頑なにペースメーカーを拒否していた私の気持ちを徐々にほぐしていった。特に、彼が私の手をもって、皮膚の下に埋め込まれたペースメーカにそっと触れさせてくれた瞬間、何かすごく温かいものを感じた。私がペースメーカーを入れることを決心したのは、それから3日後のことである。

2 件のコメント:

jingil さんのコメント...

もしも、ペースメーカーの使用を勧めてくれた人が、いけ好かない、波長の合わない人だったら、人生はまた大きく変わりましたね。お話を拝読して、人と人の出会いが未来を大きく左右する「縁」という言葉の意味を重く感じています。

MARCH さんのコメント...

本当ですね。また、医師や看護師から言われるより、患者の話の方がリアリティがあります。