2008年6月6日金曜日
C型慢性肝炎
1975年以降、日本では肝臓癌で死亡する人が急増しており、その原因の約80%はC型肝炎ウイルスだといわれている。このC型肝炎ウイルスに感染している人は、現在日本に、約150万~200万人いるといわれている。しかし、きちんと治療を受けている人は約50万人で、残りの100万~150万人の中には、症状がないため、自分がC型肝炎ウイルスに感染していることに気づいていない人も多いといわれている。
C型慢性肝炎の治療方法は、年々進歩し、現在では60~70%の慢性C型肝炎患者さんでウイルスが排除できるようになってきた。しかし、残りの40~30%の患者さんでは、まだウイルスを排除することができない。特に、65歳以上の女性の治療が難しいといわれている。
そこで、今日(2008年6月5日)から松山市で開かれた肝臓学会では、高齢者、特に高齢女性に対する治療方法について、さまざまな報告が行われた。また、ウイルスを排除する新しい薬の開発も行われており、その有効性についてのも報告も行われた。その中に、非常に興味深い報告があったので紹介する。
それは、ニタゾキサニド(Nitazoxanide 商品名:Alinia)という薬の存在だ。この薬は、ランブル鞭毛虫、赤痢アメーバ、回虫、鞭虫、肝蛭などに使われてきた薬で、どうやらエジプトで開発された薬らしい。最近は、後天性免疫不全症候群(AIDS)などの免疫不全でおこるクリプトスポリジウム症の治療薬として期待されているものだが、この薬がC型慢性肝炎に効くことが明らかになった。
実は、かなり以前から、この薬がC型肝炎ウイルスの排除に有効であるという報告がなされていたようだが、「エジプトの薬」という偏見があって、先進諸国の医師たちは信用していなかったようだ。しかし、今年ミラノで開かれた欧州肝臓学会で、その有効性が発表され、多くの医師が注目し始めたという。
その有効性を簡単に説明すると、現在、日本で行われている標準治療法でウイルスを排除できなかった人たちに、
標準治療+ニタゾキサニドの治療を行うと、なんと4人に1人の割合でウイルスが排除できたという。つまり、標準治療では全く効果がなかった患者さんにニタゾキサニドを追加投与すると、25%の患者さんが治ることになる。
この数字は、現在先進諸国の大手製薬メーカーが開発しているC型肝炎ウイルスの治療薬の有効性より、はるかに高い。
ニタゾキサニドが、なぜ、C型肝炎ウイルスに有効かは分っていないが、既に多くの人がこの薬を飲んでいるので、その副作用・安全性は明らかになっているし、なにより値段が安い。
しかし、この薬が日本の日常診療で使えるようになる可能性は、ほとんどないと思われる。なぜなら、現在開発中のC型肝炎ウイルスに対する薬には、膨大な開発費が既に投入されており、ウイルスを排除する機序も明確だからだ。
▲Rossignol.et al. EASL2008より
PegIFN+RBV:現在の標準治療薬
NTZ:Nitazoxanide
SVR:治癒率
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3 件のコメント:
素人から見ると、効くかもしれない安全な薬が使えないというのはおかしな話に見えます。医療も薬事も行政がらみでやはり市場経済優先主義なのでしょうか? 「使いたい人は使えば?」というスタンスで良いような気もします。
ところで、C型肝炎に自分が罹っているかどうかはどうしたらわかるんですか? 血液検査しかありませんか?
症状がなくても、リスクがある人は血液検査をした方がいいと思います。ALT
値が正常なら、ほとんど問題ありませんが、ALT正常のC型慢性肝炎患者さんもいます。
そこで、2002年から市町村の住民健診に肝炎ウイルス検診が加わっています。40歳以上の健康診査受診者に対して、70歳までの5歳刻みで「節目検診」が、その対象外でも「肝機能異常があり定期的な経過観察を受けていない者」や「手術を受けたり出産時に多量に出血したりした経験がある者」といった高リスク群には「節目外検診」が行われています。
神奈川県の現状は下記サイトを参考にしてください。
http://kanagawamed.org/archive/hepc20080417.pdf
大きな手術などした人は、その際にウイルス疾患の有無を調べているはずです。医療従事者のリスクになりますから。実際、カルテをみたら、私も検査されていました。自分がHIVとHCVがマイナスであることをカルテのデータで初めて知りました。
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