2007年5月13日日曜日

自殺者の8割は周囲に相談していない



東京新聞(2007年2月12日夕刊)は、「自殺を図った人のうち約8割が「死にたい」と悩んでいることを周囲に相談していないことが、厚生労働省研究班の調査で分かった」と報道している。
そして、「(日本を)弱音をはける社会に変えなければ、根本的な解決にならない」という関係者のコメントを紹介していた。

日本の自殺者数は、年間約3万人で、男女比は7:3と圧倒的に男、それも中高年の男に多く、40~55歳の男性の死亡原因の第2位が自殺なのである(因みに第1位はがん)

リストラされたことを妻にも言えず、毎日定時に出社し、図書館や公園で時間をつぶし、定時に帰宅する。給料は友人やサラ金から借金して会社名義で自分に振り込む。しかしそんなことはいつまでも続かない。疲れ切った彼は、会社の隣のビルから飛び降りた。20年前のこと。私の知人の話である。

日本の男、特に中高年の男は、妻や家族に弱音を吐くことがなかなかできない。それでいて、妻のことを「お母さん」と呼び、生活のほとんどを依存している。生活のほとんどを依存しているからこそ、仕事についての弱音を吐けないのかもしれない。生活費を稼ぐことだけが自分の役割と考えているから、その唯一の役割がリストラなどで果たせなくなると、存在理由がなくなってしまうのかもしれない。とても悲しい話である。

だから、追い詰められた人が救いを求められる相談窓口が必要なのだと、識者は指摘する。
しかし、第三者に相談することができる人は、まだ救われる。本当に失望した人、自分に生きる価値がないと思いつめている人は、例え第三者に対してでも弱音を吐くことはできないのではないか。だから、誰にも相談せずに自死を選ぶのである。

つまり、相談窓口を増やすだけでなく、生きることの価値を多様化して、少なくても働いてお金を稼ぐことは生活の一部であり、「男の最も重要な役割ではない」ことを共有できる社会が必要なのではないだろうか。

また、夫が妻に素直に弱音を吐けるようになるには、妻が夫の弱音を受け止めることができなくてはならない。そのためには、生活費は夫に依存し、生活は妻に依存するという悪しき共依存をやめて、夫婦で生活そのものを共有する関係を創りだすことが大切だと思う。

今日は母の日である。妻に「お母さん、ありがとう」という夫も多いと思うが、それだけはやめた方がよい。妻は生活のパートナーであり、けっして「お母さん」ではないのだから。

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